こんにちは、ノックスヴィルです。
今回は「STC Expert(安全保障輸出管理実務能力認定試験)」に関して、僕自身の合格体験と勉強法を詳しくご紹介します。
この試験は合格率が7〜10%と非常に低く難関です。僕も1度落ちて、2回目でようやく合格できました。
この記事では、合格までのスケジュールや学習方法、使った教材、失敗したこと、気をつけるべきポイントなど、これから受験される方にとって役立つ情報を、できる限り具体的にお伝えしていきます。
STC Expertってどんな資格?難易度や試験概要
- 試験主催:一般社団法人 安全保障貿易情報センター(CISTEC)
- 実施時期:年1回(時期は年度により変動あり)
- 試験形式:
- 法令編:択一式+選択式の計25問(マークシート)
- 貨物編:全25問の中から10問を選んで回答(マークシート)
- 合格率:例年7〜10%前後(STC Associateと比べ大幅に低い)
- 対象者:輸出管理担当者、通関士、商社やメーカーの貿易実務担当者など
- 出題範囲:外為法(第25条・第48条)、関連政省令・告示、経済産業省のQ&A、EAR(米国再輸出規制)など
▼詳しくはCISTECサイトをご確認ください。
僕の合格体験|スケジュールと学習時間の全体像
僕の場合、1度落ちて、2年かけて合格しました。以下がその学習スケジュールとおおよその学習時間です。
【1年目】(不合格)
- 7月~11月:法令中心 約250時間
- 12月~1月:貨物中心 約200時間
- 2月:EAR中心 約100時間
- 3月:試験受験
→ 合計:約550時間
【2年目】(合格)
- 11月:前年の内容を思い出す 約40時間
- 12月~1月:法令中心 約150時間
- 2月:貨物中心 約80時間
- 3月~4月:EAR中心 約130時間
→ 合計:約400時間
総学習時間:約950時間
勉強スタイル|前半は問題集、後半は過去問に集中
僕の勉強法は、基本的に「各単元の前半は問題集、後半は過去問をひたすら繰り返す」という形でした。
間違えた箇所は必ずノートにまとめ、間違いの原因や根拠条文まで深掘りして覚えるようにしました。
また、外為法とEARは同時にやらないという方針をとっていました。僕の場合、両方を同時にやると情報がごちゃごちゃになりやすく、非効率だったからです。
1年目に落ちて感じたこと

- 法令と省令の関係性を理解していないと点が取れない
- 過去問や問題集を「なんとなく理解」で終えてしまうと危険
- EARの配点が大きすぎる(全体の5〜6点)ので捨てると致命的
- EAR対策の教材が極端に少ないため、独自でまとめる必要がある
STC Expertは30点満点で21点程度が合格ライン。そのうちの5〜6点がEARから出題されるため、EARで4点は確実に取りたいところです。
法令編対策|まずは法令構造を押さえる
STC Expertの法令編は、ただ法令を暗記するだけでは合格は難しいです。
重要なのは、「外為法 → 政令 → 省令 → 告示」の構造的な理解と、なぜその条文があるのかという背景も含めて、納得しながら覚えていくことです。
STEP1:Advanced過去問で弱点を発見
初学者はまず、最新のSTC Advancedの過去問を5回分解くことをおすすめします。
間違えた問題に関わる法令は、条文を全文読んで構造的に理解するようにします。
STEP2:Expert過去問で知識を深める
Advancedで基礎が固まったら、Expertの過去問に挑戦します。
間違えた箇所は「なぜ間違えたのか?」を必ず調べ、該当条文・根拠・実務上の意味まで掘り下げてノート化することが効果的です。
STEP3:省令・告示も丁寧に読む
特に出題頻度の高い省令・告示・通達(特に提出書類通達、大量破壊兵器等及び通常兵器に係る補完的輸出規制に関する輸出手続等について)は、全文読んでおくことをおすすめします。
試験では一部を改変した選択肢もよく出るため、正確な文言を頭に入れておくことが合否を分けます。
STEP4:経産省Q&Aもチェック
盲点になりがちですが、経産省の公式Q&Aから毎年1~2問出題される傾向があります。時間に余裕があるなら、最低1周は目を通しておくべきです。
私は仕事の合間にチョロチョロ眺めてました。
目安学習時間:
法令編に必要な時間は400〜500時間程度が目安です。
この中には、過去問分析・条文の精読・ノートまとめなども含まれます。
EAR対策|市販教材がない中でどう乗り切るか
EARはとにかく範囲が広く、しかも問題集や過去問に出てこないような問題が普通に出題されます。したがって、対策には工夫が必要です。
おすすめ教材
- 『米国輸出管理法の再輸出規制』(日本機械輸出組合)
実務者向けで、試験で問われるレベルにも対応可能。ただし、ある程度EARの知識がある前提の内容。 - 『米国輸出管理法と再輸出規制実務』
図表が多く、EARの全体像を把握するのに最適な入門書。ただし出版が古くなっているので法改正には注意。
貨物編対策|得意ジャンルを見極めて重点学習
貨物編は25問中から10問を選択する形式です。全分野を網羅する必要はなく、自分が得意な分野を重点的に対策するのがポイントです。
僕は「工作機械」「先端材料」など、業務で日頃から触れていた分野を中心に選びました。一方、コンピューター関連はまったく知識がなかったため、捨てました。
それでも公式問題集は最低5周やり込みました。
使用した教材一覧(全7種)
- 安全保障貿易管理関連貨物・技術リスト及び関係法令集(改訂第29版)
輸出管理のバイブル。かなり大きいので持ち運びには向きません。
条文はネットでも見れますのでiPadなどで管理されたい方は必要ないかもしれません。
私は紙の方が見やすかったので購入しました。 - STC Expert演習問題集(法令編)
基本の1冊。EARの問題もあるので資金に余裕があれば購入したい。 - STC Expert過去問解説(法令編)
協賛会員の方はCISTECジャーナールで同じものが読めるので不要です。
一般会員の方は購入しておいた方がいいです。
これがないと過去問の解説が他にないので学習に大きな支障が出ます。
過去3回、できれば過去5回分入手しておきたいです。 - STC Expert演習問題集(貨物・技術編)
普段半分くらいの項番について検討されるような仕事をされる方は不要かもしれません。
該非判断をされた事がない、特定の項番しか使用していない方は購入した方が安心です。
Legal Expertのみの方は不要です。 - 米国輸出管理法の再輸出規制~実務者のためのガイダンス~
EARはこれがないと独学は厳しいです。
ネットでも調べられなくないですが、非常にわかりにくいのでこれが一冊あると学習スピードが上がります。 - 米国輸出管理法と再輸出規制実務
上記でも記載しましたがEARの入門としておすすめです。
出版が古いのでこれ一冊では試験対策になりませんが、図や絵を使ってまとめられているのでEARについて理解しやすいです。 - CISTECのHPで配布されている過去5回分の問題
誰でもCISTECのホームページから入手する事ができます。
僕がやってしまった失敗
- 法令・省令・告示をバラバラで暗記していた
- EARを「適当に見ておけば大丈夫」と軽視した
- 直近の法改正を見落としていた
- 経産省のQ&Aを軽視した(ここから1~2問出る)
これをやったかやらなかったかだけで本当に合格するかどうかの明暗が分かれたと思うくらい大事です。ほとんどの方がAdvancedは取得済みだと思うので基礎以上のことは理解されていることと思います。Expertではさらに一歩二歩進んだ問題が出ますのでしっかり基礎固め+いろいろな問題に触れてみてください。
まとめ|STC Expertはマニア向け。でも価値は高い

STC Expertは知名度も低く、教材も少なく、YouTubeにも対策動画がない。まさに“マニア向け”の資格かもしれません。
それでもこの資格を持っていると、同業者から一目置かれます。社内でも輸出管理の議論で説得力が増し、リーダーシップがとりやすくなります。
僕は手探りで2年かかってしまいましたが、効率よくやれば800時間程度での合格も可能だと思います。Legal Expertのみを狙うなら700時間前後が目安でしょう。
とにかく大変な試験ではありますが、この記事が少しでも皆さんの対策の助けになれば嬉しいです。応援しています!
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